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デザイン性と機能性を兼ね備えたユニバーサルデザインを追求する波佐見焼『アイユー』

2020/01/15

400年以上の歴史を持ちながら、モダンで使いやすい“普段使いの器”として近年若者を中心に支持が高まる波佐見焼。その人気は年々高まっています。そんな波佐見焼の中にあってデザインだけでなく、使う人の心に寄り添い、機能性にもこだわったものづくりを手掛けている『アイユー(aiyu)』は、 長崎県のほぼ中央、東彼杵(そのぎ)郡北部の内陸部に位置する、古くから窯業が盛んだったエリア“波佐見町皿山郷”に根を張って今年で123年。 4代目にあたる小柳勇司さんの曽祖父の代から営まれています。



「持ちやすい。食べやすい。だから、おいしい。」先代から続くユニバーサルデザインへの取り組み


アイユー商品の大きな特徴はユニバーサルデザインにこだわった商品開発。ユニバーサルデザインとは、文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した製品などの設計(デザイン)のことですが、小柳さんが一番大切にしているのは誰にとっても便利で使いやすい“道具”であるということ。

「僕の中で一番大事にしていることは、障害をお持ちの方やハンデを負われている方にとっても便利で使いやすい道具であってほしいという思いです。その道具があることによって食事が今までよりも美味しく食べられるようになったとか、この食器があることによって今まで出来なかったことが出来るようになる可能性が広がったとか、そうなればいいなっていう思いが自分のユニバーサルデザインに対する考えのベースにあります。」



必要とされるものを必要としている場所・人に届けるものづくり

アイユーの商品でユニバーサルデザインを代表するものは『eシリーズ』と『motteシリーズ』。

『eシリーズ』は小柳さんの父親にあたる現会長が元々ユニバーサルデザインというものを念頭に取り組んでいたもので、長崎県窯業技術センターと一緒に考え生み出されたという経緯があるそう。その中で誕生した様々な商品を現代表である小柳さんが整理し、ブラッシュアップさせたものが現在の『eシリーズ』です。ブラッシュアップしていく中で生まれたのが『今までのものは決して間違いではないけど、もっともっと寄り添い方を考えないと。』という想い。それが『motteシリーズ』に繋がっていきます。


『motteシリーズ』は先代から続くユニバーサルデザインの考え方を継承しつつ、小柳さんが中心となり、福祉の専門家やプロダクトデザイナーと一緒に企画・開発したシリーズ。関わったメンバーは全て長崎出身者という“ALL長崎チーム”で進められました。

「波佐見焼の名前が少しずつ広まり始めた頃、窯業技術センターで開催されたセミナーで長崎出身の伝統技術ディレクター・立川裕大さんと出会いました。当時会社のこれからの方向性をユニバーサルデザインかOEMで迷っていた時期でもあり、その点について立川さんに相談する中で『波佐見焼×ユニバーサルデザイン』の可能性に気がついたんです。」

波佐見焼の産地は中量中生産が主流、かつ人の手が多く入るため機械では出来ないことが出来る。手が込むが、だからこそ面白いものができる可能性があるということに気づいた小柳さんはユニバーサルデザインをアイユーの強みとしてやっていこうと一念発起。福祉の専門家やプロダクトデザイナーを紹介してもらい、“ALL長崎チーム”での『motteシリーズ』の企画・開発がスタートしました。

「半年である程度の形まで持っていくのがひとつのゴールだったのですごく集中して進めました。形が決まっても焼き上がりの検証などでそこからまた1年ほどかかり、企画がスタートしてから展示会に出すまでに足掛け2年程かかりましたね。例えばmotteのマグカップのボディだけでも少しづつサイズを変えたものを7〜8個くらい作りましたし、持ち手は30個くらい作りました。どういう形が持ちやすいか、手に馴染みやすいかを検証し、改良を重ねて出来上がりました。」



作り手側から売り手側への転身。だからこそ生まれるアイディアがある。

アイユーの前身は小柳さんの曽祖父が創業した窯元・小吉製陶所。多くのヒットシリーズを生みだす窯元でしたが時代の流れで閉窯。その後作り手側から売り手側へ転身することに。昭和59年、現会長が陶磁器卸小売業有限会社アイユーを設立。波佐見焼をセレクトして紹介する一方で、使い手目線でのオリジナル商品開発・デザイン開発に取り組み続けています。

「現会長の代までは製造も手掛けていました。昔からの繋がりも含め、元々は作り手だったからこそ今のスタイルがあると思っています。卸業しかやっていなかったら出ないアイディアもあると思うし、どう作って、どう提案し販売するかという流れをずっと見てきたことが自ずと今の自分に繋がっているんじゃないかなと。僕はどちらかというと何かを作ることよりもプロデュース的な立ち回りを得意としていて、逆に父は作ることに長けているので、お互い無いものを補完できている。両軸で回転できているのかなと感じます。」



アパレル業界から陶磁器業界へ、異業種を経験したからこそ生まれるものづくりへの想い

小柳さんは高校を卒業後、東京の大学へ進学。そのまま東京でアパレル業界へと就職し、意外にも実家の営む陶磁器業には興味がなかったそう。「後ろ髪惹かれる思いはありつつ、28歳のときに覚悟を決めて長崎に帰ってきました。」ずっと販売をやってきたことで商品の良さを伝える力が身についたと語る小柳さん。

「扱うものは変われどやることは同じなので、営業や展示会で提案できたりお付き合いができたり、今に生きていると思います。」

アイユーの商品はユニバーサルデザインに特化したものだけでなく、伝統の技法や形状を生かした商品も多い。なかでも人気なのは手書き風の柄が印象的な『ORIMEシリーズ』と『Mawaribanaシリーズ』。

『ORIMEシリーズ』はへリンボーンやシャークスキンなど織物の織り方の種類に着想を得た商品で、アパレル業界経験者ならではのアイディアが活きている。人間の生活の基本である『衣食住』の『衣』に関わる業界にいた小柳さんには『食』に位置する焼き物を『衣』とくっつけたい、要素を取り入れたものを作りたいという思いがあったのだそう。「『ORIMEシリーズ』の製作技法としては昔から使われているシンプルなもの。織物を柄にしたいというアイディアを形にするため職人さんと一緒に試行錯誤し、職人さんのひらめきがあって実現しました。」アイディアと伝統技術が合致して出来たアイユー定番の人気商品です。



(一番人気の『ORIMEシリーズ』。模様部分に凹凸のある技法が使われ、手掛ける職人さんによって風合いが変わるのも魅力。)

『Mawaribanaシリーズ』は波佐見焼の絵付け技法がぞんぶんに発揮された絵柄が特徴で、筆致の風合い、手描きのリズムとあたたかさが魅力。一人の絵付け職人が担当することでシリーズを通して統一感あるデザインが実現しています。あきのこない、定番とも呼べる人気シリーズです。


(スピード感ある手描きの筆致で人気の『Mawaribanaシリーズ』。)

新しいアイディアと伝統の融合で面白いものを。

小柳さんのものづくりへの思いは将来へ向かいます。

「この業界に限らずですが、トレンドがきたら右向け右でみんな同じようなものを作り始める。流行が悪いと思っているわけではありませんが、ただそれに追従して物を作りたいという考えは全くなくて、自分が『これがいい!』と思ったものをできるだけ作りたいです。トレンドとはマッチしない、時代の先を行ったようなものを作って、全然反応ないけど大丈夫かな…っていうものがあってもいい。それが数年経って動き出したりしたら嬉しいですね。あとお客さまに『アイユーさんの商品ってほっこりするね。』とよく言っていただくんです。それって関わるスタッフや職人さんの人柄が出ているのかなと。それは武器として今後もものづくりはするべきなのかなって思います。アイユーらしいほわっとした雰囲気が伝わるものを継承して作ることによって幅が広がっていく。例えば新商品を何の情報も知らずに見たときに『あ、これアイユーさんのだね。』って言っていただけるようなものづくりをしていきたいです。」


今後は食器だけではなく、異業種とのコラボレーションなど陶器でできる何か他の可能性も探っていきたいと語ってくれた小柳さん。現在はJR長崎駅の新駅舎に使用予定のタイルを会長と共に手掛けているそう。『衣×食』の次は『住×食』の繋がりが生まれています。「新しいアイディアと伝統の融合で今までなかったものを作れたら面白いですよね。」


最後に小柳さんにどういったシーンでアイユーの商品を使ってほしいかうかがいました。「気取ったシーンではなく、日常的に使ってもらいたい。スーパーで買ってきたお惣菜をお皿に盛るだけでもいいんです。この食器があることで、その時間が楽しくなってくれれば嬉しいです。」かわいらしく温かな雰囲気で使い心地も良いアイユーの商品。長く愛用したくなるお気に入りがきっと見つかります。



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